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上司もみんな『準備完了だ』といっていた。
人びとはいっせいに手をおろした。
B氏はふりかえりもせずに、決め台詞を口にした。
「みなさん、これが独占なのです」ハッチにはそんなデモンストレーションは不要だった。
E氏は、プロジェクト・クロームはだいじょうぶだと確信して、カリブ海へ飛んだ。
休暇からもどったとき、彼のプロジェクトは担架の上で息も絶え絶えになっていた。
「やつらはクロームを中止しようとしている」H氏がE氏にいった。
C氏が、E氏がいない隙を狙って、クロームを独房に放りこんでしまったのだ。
そこに閉じこめられたテクノロジーは、ふつうは処刑を待つだけになる。
インターネットエクスプローラ・チームのメンバーを含むクローム反対派の働きかけによって、C氏が、クロームのことを、ウィンドウズだけでなくインターネットエクスプローラ5の出荷スケジュールにとっても「受け入れがたいリスク」だと断じたらしい。
インターネットエクスプローラ5の発表日がまだ確実とはいえない時期だっただけに、うさんくさい主張ではあった。
C氏は、クロームのリリースを6月から早くても8月まで先送りにするといっていた。
クロームは、コンピュータメーカーがこのテクノロジーを適切なタイプのマシンに搭載してくれなければ手に入れることができない。
クロームには最高速のパソコンが要求され、最低でも64メガバイトのRAMと、当時の最高級の3Dグラフィックボードと、最新のAGP(アドバンスト・グラフィックス・ポート)が必要だった。
コンピュータメーカーを通じてクロームをリリースするというのは、品質管理がらみの決定だった。
性能の低いパソコンにクロームがインストールされないようにすることで、問題が生じる可能性を低くし、コストのかかる技術サポートの問い合わせを最小限におさえようというのだ。
クロームをマシンに組み込んで市場へ展開するには、およそ6週間かかる。
つまり、8月にクロームが完成しても、新学期の9月には間に合わず、絶好の販売機会を失うことになるのだ。
それ以上遅れたら、もっと重要なクリスマスシーズンをのがすことになる。
Y氏は『受け入れがたいリスク』といったけど、あれはまちがいなく政治的な決定だった。
別のチームが、ブラウザの核であるHTMLテクノロジーをリリースするのが気に入らなかったんだろうね。
クローム派のスコットランド人、M氏は語る。
どれだけのマシンが壊れるかわかったもんじゃないから。
むこうのチームは、こっちのリリース予定を気にしていた。
予定どおりに出荷できるとは思っていなかったんだろう。
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